東京オートサロン2027に向け、「オール日産!プロジェクト」が始動。その目玉となるのが、「ミスターGT-R」田村宏志氏とKUHL代表・片岡孝裕によるエアロパーツの共同開発だ。 長年、日産自動車で日本を代表するスポーツカーの開発に携わってきた田村氏の知見と、KUHLの独創性溢れるデザイン力を融合し、フェアレディZとエルグランドで一切の妥協を許さない機能美を追求。両者が描く、新たな日産カスタムの可能性に迫る。

片岡:そもそも田村さんと一緒にモノづくりをすることになるなんて、夢にも思っていませんでした。出会いはマレーシアのオートサロンでしたよね。
田村:そうそう。関係者が集まる夜のパーティー会場で、私が歩いていたら、たまたま片岡社長の前の席が空いていて「ここに座ってください!」って導かれたんですよ(笑)。
片岡:私からすれば天下の「ミスターGT-R」ですよ。まさに自分の「推し」が目の前に来たわけですから、座ってもらうしかないと。最初は自動車メーカーの方ということで硬い印象を持っていたんですが、話し始めたらもうぶっ飛んでいて。仕事の話は一切せず、ひたすら車の話で盛り上がりました。
田村:私はその時、その場でスマートフォンを使ってKUHLのことを調べて、「エアロパーツをやっている会社なんだな」と(笑)。でも何より、片岡社長の目が5歳児みたいにキラキラ、いやギラギラしていてね。「俺、車が好きなんですよ」っていう素直な情熱が、すごく私のハートに刺さったんです。
片岡:日本に帰国してから、東京で食事をしたんですよね。その時、田村さんがR35 GT-R NISMOに乗ってきて、私を助手席に乗せて大黒PAまでドライブしてくれて。
田村:私なりの「おもてなし」ですよ(笑)。レストランじゃなくて、NISMOに乗せて大黒へ行くっていうね。
片岡:大黒PAでは「なんでKUHLの社長が田村さんの横に乗ってるんだ!?」って大騒ぎになりました。でも道中、田村さんが「ここの足回りが…」「ここの空気が…」と熱く語ってくれて、プロの凄みに心底感動しました。その後もホテルに戻って、深夜のロビーで炭酸水を飲みながら夜中の2時、3時まで語り合って。
田村:そこからですね。「KUHLのエアロ製造技術は日本一だ」と言うなら工場を見せてくれと打診して、埼玉と大阪の工場を視察しました。真空成型機などの設備を見て、「これは本気だな」と。そこから埼玉工場のショールームで、Zを前に第1回目のデザインレクチャー、いやダメ出し?(笑)が始まったわけです。

片岡:そうした経緯があり、いよいよ「オール日産!プロジェクト」が本格始動します。田村さんにはエグゼクティブアドバイザーとして、RZ34(マイナーチェンジ後モデル)と新型エルグランドのエアロパーツを監修していただいていますが、デザインのせめぎ合いが本当に熱いですよね。
田村:KUHLのエアロは「惜しいところまでは来ている」と思っていました。センスはいいんだけど、例えば空力的に壁になってしまっている部分がある。私はやるからには「なんとなくカッコいい」ではなく、きちんと風洞に入れて測定し、意味のあるデザインを落とし込んだ方がいいと提案しました。
片岡:私が「もっと羽を立てたい、派手にしたい」と言うと、田村さんから「それは空力的にNGだ」とストップがかかる。
田村:フェアレディZには、S30型から続く「生めかしさ」や「艶やかさ」というDNAがあります。それを現代の空力とどう融合させるか。特にリアの造形が重要なんです。車は走っている時、後ろ姿を一番長く見られる。だから私はデザインの9割をリアに注ぎ込みます。
片岡:リアバンパーの巻き込みを防ぐためのフィンや、スーパーローマウントのダックテールウイングなど、機能美を追求した結果、これまでにないKUHLの新しいスタイルが生まれました。
田村:今回はムーンクラフトさんのムービングベルト式風洞実験で、路面が動いている実際の走行状態を再現して数値を徹底的に出します。空力のスーパースペシャリストにも参画してもらっているので、デザインと機能の妥協のない着地点を見せられるはずです。



片岡:そしてもう1台が、新型エルグランドです。スポーツカーであるZとは全く方向性が異なりますが、ミニバンにおける空力デバイスの考え方はどのようなものになるのでしょうか?
田村:エルグランドの本質は「グランドツーリング、言わばGT」です。ハンドリングが良く、車体が安定しているからこそ、同乗する家族みんなが快適に過ごせる。 かつてR34型スカイラインGT-Rの「M-Spec」というモデルでカーボンディフューザーを採用しましたが、あれはダウンフォースのためだけでなく、床下の空気のざわつきを取り除き「静粛性」を上げるためのものでした。
片岡:なるほど。ダウンフォース=レーシーな走り、というだけでなく、空気の流れを整えることが、ミニバンの静粛性や乗り心地の向上に直結するんですね。
田村:その通りです。だからエルグランドのエアロは、下面の空気の入れ方や底面への流し方に徹底的にこだわっています。ベースの美しいデザインを壊さず、機能としての整流効果をいかにABS素材の限界造形で表現するか。そこが今回の挑戦ですね。


片岡:RZ34はドライカーボンやFRPなど素材も選べるアンダーディフューザー仕様、エルグランドはABSの限界に挑むハーフエアロ仕様として、現在急ピッチで開発を進めています。
田村:風洞実験での数値がダメならリリースしない、それくらいの覚悟でやっていますから(笑)。ですが、すでにかなりの手応え、パーフェクトな結果が出せる確信はあります。
片岡:2027年1月15日から幕張メッセで開催される東京オートサロンでは、この2台の実車展示はもちろん、風洞実験のデータも皆様に堂々とお披露目する予定です。期間中は田村さんとのトークショーも予定していますので、ぜひご期待ください!
田村:メーカーの人間がエアロデザイナーとタッグを組み、熱いモノづくりをする。こういう時代が来たんだなと私自身ワクワクしています。「オール日産!プロジェクト」、ぜひ楽しみにしていてください。
田村宏志氏監修による3台のコンプリートカーが東京オートサロン2027にてデビュー。後期型RZ34のノーマル&ワイドボディ、そして新型エルグランド。KUHLが描く、新たなカスタマイズカーの進化形にどうぞご期待ください。
プロジェクト完全公開まで
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